なぜ血友病になるのか?
なぜ血友病になるのか?

外見上は、人は皮膚や筋肉、骨から成っていますが、非常に小さい視点で見れば、人間の体は数兆個の細胞から成っており、その一つ一つが複雑な生命体として存在しています。 細胞は生きている積み木のようなものです。
全ての人間の生命は母親の体内の中の1個の細胞としてスタートします。そして、母親の体内の卵子が父親の精子と結合した瞬間に、新しい生命が作られます。 実のところ、その時には既に、子供が男の子なのか、女の子なのか、血友病なのか、そうでないかが決まってしまっています。

では、1個の細胞がその全てをどうやって決めているのでしょうか? 答えは遺伝子の中にあります。

一個の細胞の中には、その細胞自身をコピーして二つに分割するのに必要な、全ての科学的な設計図が入っています。 分割が繰り返されることにより、その細胞は百万個まで増えていき、最終的には数兆個の細胞になります。
この際、遺伝子はどのように全体をコピーし、分割を行うのかを指示し、さらに幾つかの細胞には、心臓の細胞、脳の細胞、歯、胃、指の爪・・・・となるよう命令を出していきます。また、遺伝子は体の機能についても指示を出していきます。例えば、どうやって心臓を動かすのか、どうやって学習するのか、走るのか・・・・そして、どうやって血を固めるのかも。

血友病患者の遺伝子には、血を固めるための正しい設計図がないため、体内には血を固める物質が存在しないか、または正しく機能しません。 血友病は遺伝の病気であり、血友病という遺伝子を親から受け継ぐことにより病気になります。
では、なぜ同じ家族でも、この遺伝子を引き継ぐ子供がいたり、引き継がない子供がいるのでしょうか?

この質問の答えは、染色体にあります。 遺伝子は23組の染色体のペア、計46個の染色体の中に包まれており、体の中のどんな細胞の中にでも見つけることができます。
血友病を引き起こす、血を固めるための誤った命令情報を持つ遺伝子は、一つの染色体ペア中にあります。 それは、私たちが、男であるか、女であるかを決めるのに使用されるのと同じ染色体で、性染色体と呼ばれています。 これが、血友病が性別に強く関係する理由であり、ほとんどの血友病患者が男性である理由でもあります。

母親の卵子の中には23個の染色体があり、母親の遺伝的特徴の半分が入っています。 父親の精子の中にも23個の染色体があり、父親の遺伝的特徴の半分が入っています。 卵子と精子が結合した時、46個の染色体が新しい細胞に与えられ、そして細胞から人間の体へと成長するのに必要となる、23組の染色体ペアへと整理されます。

この新しい生命は男でしょうか、女でしょうか?
23組のうち、最後の1組の染色体ペアがそれを決めます。女性の性染色体は「XX」であり、男性の性染色体は「XY」です。 女性、男性に関わらず、常に最低でも一つのX染色体が存在します。母親の卵子は常にX染色体を持っていますが、父親の精子はXかYのどちらかの染色体を持っています。
卵子が精子と出会い、新しい生命が誕生する時、卵子は常にXを持っていますが、精子は女性が誕生する際はXを、男性が誕生する際はYを持っていることになります。 子供の性別を決めているのは、父親なのです!

性別を決めるのは父親の染色体ですが、血友病かどうかを決めるのは母親の染色体です。
血を固めるための命令情報がゴチャゴチャになってしまっている(血友病)遺伝子は、X染色体の中でのみ見つかります。 もし母親が血友病の保因者(キャリア)なら、彼女の持つ全X染色体のうち、半分は血友病遺伝子を持っていることになります。 残りの半分は、正しい血を固める命令情報を持っている、正常なX染色体です。
正しい命令情報は、たとえ正常なX染色体が半分しかなくても、母親の血液を固めるには十分です。血友病は母親から受け継ぐ遺伝病ですが、その母親が血友病にならないのは、この理由からです。

しかし彼女は保因者であり、そのため息子は血友病遺伝子を持つX染色体を受け継ぐかもしれません。 母親が作る卵子は、正しいX染色体を持つものと、血友病遺伝子を持つものの2種類となり、これにより、保因者の息子は50%の確率で血友病となります。 これはまた、娘が保因者となる確率も50%であることを示しています。この場合、血友病遺伝子を持つX染色体を母親から譲り受け、正常なX染色体を父親から譲り受けます(父親が血友病でない場合はX染色体は常に正常)。娘は正しい血を固める命令情報を父親から貰っているので、血友病にはなりません。
(注:女性も血友病になる場合があります。母親が保因者で、父親が血友病の場合、生まれる女性は50%の確率で血友病になります。これは非常に稀な確率ですが、居ないわけではなく、Webmasterは実際にそういった女性にお目に掛かったことがあります。)

血友病患者が成長し子供を持つと、子供に血友病遺伝を持つX染色体を渡すか、Y染色体を渡すかの何れかになります。Y染色体、これは生まれる子供が男の子であることを意味しますが、彼は普通の子供として生まれるでしょう。
しかし、娘へは血友病遺伝子の入ったX染色体を渡すことになるので、娘が生まれた場合、必ず保因者になります。

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