血友病とは?
血友病とは?

日本ではほぼ4~5千人の人が血友病(血友病Aもしくは血友病B)に罹患していると言われている。
血友病は、通常の血液凝固に必要な因子の一つが欠けているか、供給量が極端に少ない病気である。 血中のこれらの因子の量により、血友病は軽度、中程度、重度と分類される。

血友病患者の約60%の人は重症の部類に入る。 これらの重度の血友病患者は歯科治療、手術、外傷を受けた場合に出血の危険にさらされる。 また、外傷や負傷など、明らかな理由なしに内出血を起こす場合もある。 特に関節部位での出血を繰り返すと、血友病以外の健康問題や、慢性的な関節障害、関節の可動範囲が限られてしまうなどの身体障害を引き起こす可能性がある。

血友病患者の約15%は中程度の血友病である。 これらの人々は手術、外傷を受けた後の出血や関節傷害の危険にさらされるが、自然発生的な出血は滅多に起きない。

血友病患者の約25%は軽度の血友病である。 これらの人々の病状は、手術や外傷による出血が起きるまで、血友病であることに気づかない場合があるほど軽度である。

血友病遺伝子は女性のX染色体の一つによって運ばれ、男系の子孫へ遺伝する。 このような理由から、血友病は判性劣性遺伝と呼ばれる。

血友病を保因する女性(キャリア)は、正常な遺伝子を持つ一つのX染色体と異常な遺伝子を持つ一つのX染色体を保持している。 この場合50%の確率で男子へ血友病遺伝子が遺伝する。 言い換えれば、生まれる男の子が血友病になる確率が50%あるということである。 また、生まれる女の子に血友病遺伝子が遺伝する確率も50%であり、これは女の子がキャリアとなる確率が50%であることを意味する。(図1)

全てのケースの3分の1は、家族に病歴がなく、新規もしくは突然変異によって血友病が発生する場合である(図2)。
このような状況での血友病遺伝子の存在は、血友病の息子を産んだ後に母親がDNA検査などのスクリーニングを受けた時のみ明らかにされる。

不完全な遺伝子を受け継ぐ男性は例外なく血友病となる。これは、女性と違って男性は一つのX染色体しか持たないからである (性によって持っている染色体は異なり、男性は XY、女性は XX を持つ) 。 Y染色体は主に性の決定と深い関係があり、血液凝固因子の生成に関する遺伝子は含んでいない。

血友病の父親と、キャリアではない母親から生まれる男の子は血友病とはならない。 これは、男の子がX染色体を母親からもらい、Y染色体を父親から受け継ぐからである。
しかし血友病の父親から生まれる女の子は、父親の血友病遺伝子が遺伝する。これは、女の子がX染色体を母親と父親の両方から受け継ぐからである。 このようにして彼女はキャリアとなる。(図3)

非常に稀ではあるが、血友病の父親とキャリアの母親から女性の血友病患者が生まれる場合がある。(図4)

ほとんどのキャリア女性は、健康上の問題や、血友病遺伝子の保有に関する徴候は全くない。 これらの女性は無症候性キャリアとして知られる。
しかし、幾人かのキャリア女性は (血友病ほどではないが) 出血に対する凝固因子のレベルが低い状態にある。 これらの徴候性キャリアは、過渡の月経出血や鼻血、手術や歯科治療、出産の後の出血に悩まされる場合がある。 また、ストレス、運動、薬、月経中や妊娠前後のホルモン・レベルの変化などで、徴候性キャリアの出血パタンに影響を及ぼす場合がある。 過渡の出血を起こすキャリア女性は、出血系の病気の治療に熟練した医者に検査してもらったほうが良いだろう。

図1
通常の男性と、保因者の女性との間に出来る子供の遺伝子。 1/2の確率で保因者か、血友病の子供が生まれる。

図2
通常の男性と、通常の女性との間に出来る子供の遺伝子。 両親ともに遺伝子に異常がなくても、突然変異により保因者の女性、または血友病の男性が生まれる場合もある。
母親のDNA検査により、実は母親が突然変異による保因者の場合もあり、この場合は、この図2を経て図1のパターンとなる。

図3
血友病の男性と、通常の女性との間に出来る子供の遺伝子。 女性は全て保因者となるが、血友病の子供は生まれない。

図4
血友病の男性と、保因者の女性との間に出来る子供の遺伝子。 稀ではあるが、女性でも血友病となる場合がある