平成17年度 総括・分担研究報告書
平成17年度 総括・分担研究報告書

2006.3 (厚生労働省研究事業 報告書より)

現在、日本においても厚生労働省から補助金を受けて血友病の遺伝子治療の研究が行われています。以下本文は、平成17年度の報告書を引用し、Webmasterが再構成したものです。
論文、報告書は厚生労働省の厚生労働省科学研究成果データベースより閲覧可能です。

血友病の治療とその合併症の克服

自治医科大学の坂田洋一教授の下では、現在の対処療法的な血液製剤の補充による治療ではなく、遺伝子を用いた血友病治療法の研究を行っている。 遺伝子治療においては、直接体内に遺伝子を導入する方法と、幹細胞を患者から取り出して遺伝子を埋め込み、再度移植する方法がある。
坂田教授は双方の方法について研究を進め、まだ解決すべき問題はあるものの、一定の成果を上げたと報告している。 特に、血液幹細胞に第8因子を導入し、血小板に載せて運ぶ方法は予想以上の成果を挙げ、臨床応用の可能性が示唆された。

報告書によると、遺伝子の運搬に必要とされるウィルスとして、体内に直接投与する際はアデノ随伴ウィルス(AAV)ベクターを使用し、細胞に移植する際には日本オリジナルのサルレンチウィルス(SIV)ベクターを使用している。

体内直接投与に関しては、マウスに対するAAVベクターの投与を行い、肝臓への特異性を高める工夫により、第8因子の血中レベルが800%にも及び、 また肝機能にも異常は見られず、一年以上の発現が持続しているという。
同様に第9因子に関しても、血管内細胞、脂肪細胞への発現を試み、20週以上、10%の発現が持続したという。

第9因子に関し、同様の試験をサルにも行ったが、サルは、今回使用したAAVベクターの抗体を少量保持しており、血中に期待レベルの第9因子は得られなかった。

遺伝子を導入した細胞の再移植に関しては、治療レベルに必要とされる肝細胞を増やすために、マウスを増殖装置として利用する手法を開発した。 マウスやイヌから肝細胞を取り出し、これに遺伝子を導入し、マウスに再移植を行う。
マウス肝細胞に関しては、100日を越えて安定生着し小肝組織が形成された。 イヌ肝細胞も同様で、マウスに移植された肝臓の85%がイヌ由来の肝細胞に置換されたことが確認された。 この技術により、マウスを用いて肝細胞を安定して増幅供給できるという。

また自己血液幹細胞に第8因子を導入し、種々の実験を行ったところ、血小板を媒介とした方法に大きな優位性が認められたという。
血液幹細胞に第8因子を導入した細胞をマウスに移植したところ、血小板からの第8因子の放出が確認された。 骨髄巨核球に第8因子を発現させ、血小板に出血部位へ運搬させることは、理に適っており、半減期も血小板の寿命である7日間に延長する。 さらに、インヒビターが存在していても、出血部位で因子が放出されるため、殆どインヒビターの影響を受けず優れた方法であるという。

体内直接投与は、マウスでの技術はほぼ確立したものの、人間への応用にはサルでの長期安全の検討が必要である。しかし一方、サルの抗体がその阻害要因ともなっており、さらなる研究が必要とされる。
また、再移植の治療法に関しても、実用化にはSIVベクターの一層の安全確立と、インシュレータと自殺遺伝子の同時組み込み等が必要とされる。

現状まだまだマウスでの実験レベルであり、安全性確保のための十分な基礎的実験がなお必要である。