血液凝固に関する研究
血液凝固に関する研究

1998.4.13 米国ミネソタ

我々の大部分の人たちは血液が凝固するのは当然のことと考える。
わずかな裂傷、切り傷はなんの問題も起こさない。
それは我々の大部分が、なくてはならない血の固まりを作るために相互に作用するタンパク質である、血液凝固因子を持っているからである。
しかしながら血友病患者は凝固因子が不足しており、欠けた因子を血液製剤の注射に頼っている。
これらの注射は凝固過多を引き起こし、それに大変高価である。
しかし、もし凝固因子がもっと優れた働きをするのなら、より少量で頻度も少なく、安価に提供できる。

このシナリオは遠くない将来実現するであろう。ミネソタ大学の生化学教授 Gary Nelsestuen に感謝する。
Nelsestuen教授は生化学大学院生と共に、凝固因子の新しい形態を設計し、試験管内の実験においては、通常組織体によって生成される因子より速く凝血を起こした。

彼の実験は血友病に対してより有効で安価な治療を可能にするだろう。
他のタンパク質での関連技術は、いつか反対の状態の患者 (過渡の凝固作用) の治療に役に立つかも知れないと、教授は言う。
実験は 98/4/14 全米科学学会 (National Academy of Sciences) の会報に掲載される。 Nelsestuen教授はこの製法に関して特許を申請した。

「Gary教授の開発はすばらしい」と血友病研究者 Nigel Key (薬科大学助教授) は言う。
「血友病の酷いケースに対する、どんな新しい治療法も非常に歓迎されると思う」

Nelsestuen 教授はビタミンK依存タンパク質の働きについて研究を進めており、凝固因子の特性がもっとよく働いたなら、因子は全体としてもっとよく働くだろうと論じた。
より高性能の因子生成のカギは、ビタミンKの働きを調べることにある。
彼のラボでの最近の発見は、このプロセスを明らかにし、新しい技術として承認されたところである。

血友病の最も重症なケースを治療するのに使用される凝固因子である第7因子の働きに関し、Nelsestuen教授は、その構造において2つの簡単な改造をすると4~100倍の機能改善が可能であることに気づいた。
シアトルの研究者が第7因子の改造を手伝うために参加した。
次のステップは、(この改造した第7因子が) 動物と人間の通常の第7因子より効果があるかどうかを観察することであると教授は語った。

凝固とは多くの要因を巻き込む複雑なカスケードであるとNelsestuenは説明する。
血友病患者に対し、カスケードの決定的な部分が第7因子から第10因子までの要因に関係する。
血友病Aは第8因子が欠けているが、第8因子の注射が治療を可能とする。
同様に血友病Bは第9因子が欠けており、注射で治療が可能となる。
けれども、それらの因子が決して体内で生成されないのであれば、免疫系は外部からの侵入者とみなし、因子が注射された時破壊するかも知れない。
(幾人かの血友病患者は欠けている因子を微量生成しており、これらの因子が注射されても免疫機構からの危険に直面しない)

運良く、第7因子の大量投与は第8因子あるいは第9因子の欠乏の代わりに用いることが出来る。
そして、全ての血友病患者は当然第7因子を作り出すから、免疫機構はそれを単独で残す。
従って第7因子は、理想的に与えられるべき因子を免疫機構が拒絶する血友病患者に対して与えられる。

2つのアミノ酸を他のアミノ酸に置き換えた第7因子の合成版を使用し、幾つかの異なる血漿組織で凝固スピードを測ったところ4~100倍の能率アップを達成した。
教授は、同じ種類の改造はより効果的な第9因子の生産をも可能にしたと語った。そしてそれは同じくビタミンK依存タンパク質である。

そしてその技術はただ凝固因子に対するものだけではない。
その技術は凝固を妨げるタンパク質に対しても拡張される。
Nelsestuen教授とその同僚は、より効果的な非常に遅い反凝固タンパク質を生成するためにアミノ酸の交換を既に使用しており、人間相当で効かない理由はない。
そのタンパク質は、タンパク質Cとして知られており、幾つかのタイプの患者で好ましくない凝固作用を妨げるのに役に立つかも知れない。

「凝固に深く関係するビタミンK依存タンパク質は少なくとも6個あり、この技術はおそらくそれらの全てを改善することが出来る」と Nelsestuen 教授は語った。

現在バイパスとしての第7因子を用いた治療は高価なことと、食糧医薬品局 (Food and Drug Administration) の許可が少ないため制限されていると Nelsestuen 教授と Key 助教授は言う。
しかしながら Key 助教授は、従来のバイパス治療より効果的でより安全であることを、第7因子の大規模な臨床試験が示したと付け加えた。
その試験では、Key 助教授の数人の患者を含め、国中の60人の血友病患者が家庭で第7因子を使用した。

他のバイパス治療は存在するが、しばしば凝固過多を引き起こすと Key 助教授は言う。
それらの治療法は、活性化された第7、第9、第10因子やその他の凝固タンパク質の混合を含んでいる。
血友病の最も酷い場合は、年間の治療費が間違いなく10万ドルかかる。Nelsestuen の改良はその額を減らすであろうと、Key 助教授は言う。
彼はまた、第9因子に対する似たような改良は血友病Bの患者への投薬量を減らすことが可能だと言う。