Avigen社が血友病遺伝子治療を断念
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Avigen社が血友病遺伝子治療を断念
2004.5.28 (ニュヨーク・タイムズ) これは、遺伝子治療の分野へのダメージとなるかも知れない。ある小さなバイオテクノロジー企業が、技術的、安全性の問題に陥ったとして、注目されていた血友病の遺伝子治療の研究を中止した。 この企業、Avigen社は、戦略的焦点を神経系疾患へと移せるように、血友病の研究終わらせたと語った。 しかし、それはまた、血友病治療が「科学的確証と規制、臨床のハードル」に直面したことを物語っている。
Mark A. Kay 博士(この研究を支援していたスタンフォード大教授)は、若干の安全性の問題が発生したと語った。 血友病治療への試みは、最初の遺伝子治療の成功例となりうる、幾つかの兆しが見えていたことから、注目を浴びた。 この治療法を用いて、何頭かの犬が完全に治癒されたことから、バイエル社は Avigen の治療法の権利を認可した。 一般的に、遺伝子治療はあまり効き目がなく、最近では安全性の問題があった。 昨年、一昨年、フランスにおいて、遺伝子治療で重症複合型免疫不全症(SCID) を治療した二人の幼児が、その後、この治療によって引き起こされた白血病を発症した。 1999年には、ティーンエイジャーが、ペンシルバニアで遺伝子治療を受けている最中に死亡した。 訳者注:両件とも原因は概ね解明されており、SCIDの件については使用されたレトロウィルスベクタと、遺伝子が挿入された部位により、ガン関連遺伝子を誤って活性化させてしまったためと言われている。 血友病患者は、血液凝固に必要な、ある種のたんぱく質を欠いている。 Avigen社は第9因子が生成可能となる遺伝子を、患者の体内に与えようと試みていた。 第9因子は血友病Bの患者に不足しているたんぱく質である。 遺伝子治療では、患者の細胞の中へ必要とされる遺伝子を運ぶために、遺伝子を組み替えたウィルスを使用する。 Avigen社によって使用されたウィルスのタイプは、アデノ随伴ウィルスとして知られており、遺伝子治療において使用頻度が増している。 それは、ペンシルバニアでティーンエイジャーが死亡した際に使用されていたウィルスよりも安全だと思われているからである。 従って、もしAvigen社の問題がウィルス自体に関係するのであれば、それは大部分の遺伝子治療の分野に対する問題でもあることを意味する。 しかし Avigen社は、この問題は「血友病固有」の問題だ考えている。 Kay 博士は、問題がウィルスにあるのかどうか、分からないと答えている。 しかし、彼は「これらの全ての問題は解決される」と言い、遺伝子治療は血友病に効き目があることに「疑いはない」としている。 この治験は以前にも幾つかの安全性の問題と、研究の遅れの問題が発生していた。 実際、数年後においても、治験は3段階中の1段階目であり、一握りの患者のみが治療を受けていた。 訳者注:当初今ひとつ効果が不十分であり、ベクタ投入部位を肝動脈に軌道修正するも肝障害が惹起されるなど、迷走状態であったらしい。 遅い進捗は、企業にとって注目を集める一因となり、長年CEOを勤めたJohn Monahanは圧力を掛けられ3月に辞任し、その後任にCOOのKenneth Chahineが着いた。 |
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