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医学用語メモ
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血友病に関係の深い医学用語を並べてみました。

アルブミン (albumen)

血液中の血を固まらせる血小板や血液凝固因子、栄養分などを運ぶ血液成分をアルブミンと呼ぶ。
アルブミンは血漿中に高濃度に存在し、血管中に水や塩を保持するのに必要な浸透圧を維持する上で重要な働きをしている。アルブミンが減少すると、液体が組織へ漏出し浮腫と呼ばれる体が腫れる現象を引き起こす。またアルブミンはさまざまな酵素やホルモン、代謝産物を運ぶ働きもしている。

血液製剤は基本的に人間の血液中のアルブミンを加工して製造される。しかしアルブミン中には肝炎ウィルスが存在する可能性があり、現在の技術ではある種の肝炎ウィルスを完全に除去することは難しくウィルス性肝炎感染の問題が残されている。
実際には、血液提供者が肝炎ウィルスに感染していないかどうかの検査を行い、ウィルスに感染していない人の血液を使用するため問題はないとされるが、完璧とは言えない。
このことから、現在では組み替えアルブミンと呼ばれる人工的に作り出されたアルブミンが開発され、実用化まであと一歩のところである。

アルブミンに対し、酸素を運ぶ赤血球、免疫を担う白血球はグロブリンと呼ばれる。

遺伝子治療 (gene therapy)

遺伝子を組み込んだ細胞あるいはウィルスを患者に戻すと、体内でその遺伝子が働き、病気に関わる遺伝子の働きを抑えたり補ったりして病気を治す。遺伝病、がん、エイズなどの治療に期待が持たれている。日本は遺伝子を運ぶベクターの開発などで米国に大きく遅れ、厚生省は95年に、ベクター開発を目的とした半官半民のDNAVEC研究所を発足させた。

血友病は第VIII因子や第IX因子の活性を僅かに上昇させれば出血症状を抑えられるという点から、遺伝子治療の適応疾患の一つと考えられる。
現在まで、レトロウィルスをベクターとして用いた数多くの研究がなされたが、いずれも凝固因子の産生は一過性であった。
ところが最近、アデノウイルスベクターに組み込んだヒト第VIII因子をマウスに注射したところ、5ヶ月以上に渡り有効な血中濃度が得られたという報告(文献:Connelly,S., et al.: Blood, 87:4671)がなされ、注目を浴びた。

しかし、その後の研究により、血友病ではない別の免疫障害の遺伝子治療に際し、非常に高い確率で白血病が発生するという問題が起こった。白血病は血液の癌であり、ある意味血友病よりもリスクの高い病気である。
ほぼ原因は解明されてはいるものの、遺伝子治療はリスクの高いものと認知され、血友病の遺伝子治療は停滞気味である。

血友病 (Hemophilia)

血液凝固に関する因子のうち、第VIII因子(抗血友病因子A,抗血友病グロブリンA)、第IX因子(抗血友病因子B,クリスマス因子)のいずれかあるいはその双方が先天的に欠如し、出血性傾向を呈する疾患。遺伝子が女子によって運搬される判性劣性遺伝形式を示し、一般的には女子は運搬者であって、男子のみに発病する。出血性傾向、ことに関節出血、皮下出血、血腫形成、血尿、筋肉内出血が見られ、出血に際し血液凝固時間、トロンボプラスチン時間が延長する。しかし、出血時間はほとんど正常である。

インヒビター (inhibiter)

人間は本来体内に持っていないもの(異物)に対して生体の防御反応の一つとして、これらに対する抗体を作る免疫機構がある。血友病患者の一部の人は輸注された第VIII或いは第IX因子に対して、侵入者とみなして同じような抗体を作ることがある。
抗体が出来ると血液製剤の輸注の効果がなくなってしまう。インヒビターの発生は普段注射している血液製剤の種類、量とは関連なく出現し、一回の輸注で発生する人もいる。

インヒビターを持つ患者に対しては、活性型第VII因子製剤(第VII因子は誰でも持っているため抗体が出来ず、第VIII,IX因子の代わりとなり得る)によるバイパス療法という治療法がある。また、ブタ第VIII因子による治療や、特別な血漿交換の他、従来のバイパス療法よりも効果的な組み替え第VII因子を用いた治療法などが開発されつつある。