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タイトル: 独り言
投稿者 : HIV感染血友病患者の一人
URL   : 未登録
登録時間:2007年7月11日08時11分
本文:
supremeredさんにはフォローいただきまして感謝申し上げます。
supremeredさんのおっしゃるとおりで、
それぞれが私見をお持ちになることは結構ですが、
血友病患者にとって無益な考え方がさぞかし真実のように垂れ流され、
特に血友病の診断を受けたばかりの子供の若い親御さんなどが、
誤解するとまずいと感じて逆に釣り返しをさせていただきました。

先の書き込みもと議論をするために書き込んだわけではありませんし、あま
りにひどい内容の書き込みを延々と続けられるようなので、ブレーキになれ
ばと思い以下を述べます。

診断を受けたばかりの血友病患児の親御様の方々で経験の少ない方々は、何
が真実かを見極めることすら困難だと思います。そんな中で不正確なことの
羅列は血友病患者にとって不幸に違いないので私の知識の中で2007年現在に
おいて大多数の人たちに受け入れていただけるであろう常識的な血友病の歴
史的な事実と治療法について述べます。

以下内容に関してそれほど大きな誤りはないと思います。

血友病は中学の教科書にも病名が載っているくらい病名だけは知られていま
す。私が思うにはビクトリア女王が血友病保因者であったため、ヨーロッパ
王室に広まり伴性劣性遺伝の代表例として家系図を紹介するのに適当だった
からだと思います。別に血友病を差別したり変わったものとしてみるためで
はないと思います。これは事実として受け止めることが必要です。
1960年代より治療法が血友病治療の研究が飛躍的に進歩し、ヒトの血液の輸
血からクリオ、そして濃縮凝固因子製剤の投与で止血が簡単になりました。
そのため命を失うような場所の出血、つまり脳出血や内臓などの出血でそれ
自体が普通の健康な人でも死亡しかねない出血でもない限りは、血友病患者
が出血そのもので死ぬことはほとんどなくなりました。私も頭の出血も吐血
や下血も経験していますが、製剤投与と手術で今も普通に生きています。
データは正確には記憶していませんが、1950年代ころまでの血友病患者の平
均寿命は、supremeredさんのおっしゃるように先進国でも30歳前後までだっ
たと思います。凝固因子製剤の普及以降は平均寿命はほとんど健康な人たち
と同じくらいにまで伸びました。この状況は先進国ではどの国でも同じでし
ょう。
私の知っている年配の方々は「ワシは子供のときは長くは生きられんと医者
に言われ続けた」と今となっては昔話として笑いながら話されます。これは
当時の医学レベルとしては当たり前の宣告であり、少なくとも私の知る患者
さんの多くは笑い話のように話されます。そういわれたことをいつまでも引
きずっている必要はないとおもいます。
1980年代になって患者会の活動や専門医の努力もあり先進諸外国では当たり
前になりつつあった凝固因子製剤の家庭療法(ホーム・インフュージョン)
が認可され、日本では血友病の治療が全額公費負担になりました。
私も認可直後に自己注射を練習しました。それ以降は関節出血などの出血な
ら自宅で注射できるようになって、注射のために通院する必要がなくなり、
出血で休むことはほとんどなくなりました。
ちょうどこのころにHIVの問題が出てきて、不幸にも血友病患者の3分の1が感
染し多くの方々がお亡くなりになられました。私の場合は進行が遅かったの
か幸いにして、薬を飲みながら現在も命をつないでいます。1980年代か90年
代初めに始まったのがカミングアウトした一部患者とそれらを煽った桜井よ
しこ氏も含めたマス・メディアの報道でした。これが結果的には裁判上に有
利な世論が形成されることになり、また当時は自民党政権ではなく、運よく
(?)菅直人氏が厚生大臣であったこともあって患者側と国と製薬メーカー
との和解が成立しました。しかし、これもマスコミの世論誘導があり、一部
のメーカーでインチキ臭い販売をしていたことは聞こえてはきましたが、現
在では治療法の主流である自己注射や予防投与も癒着構造から生まれてきた
ものでけしからんという味噌も糞も同じというような報道をされていたと思
います。
私は血液製剤は血友病を完全に治すことはできないまでも、自分を健康な人
に近づけるための薬と考えています。HIVまたB型やC型肝炎問題の反省を踏ま
えて研究者や製薬会社の努力で技術開発が行われた結果、現在の凝固因子製
剤はどの製剤も安全性は極めて高いと云えます。

このような現状の中でも血友病患者に残った問題はまだまだありますが解決
されつつあるものもあります。思いつくことをいくつかあげさせていただき
ます。
・成人になると多くは足や肘などの関節が動きにくくなります。私もそうで
す。これによって日常生活が困難になっている患者も多くいます。しかし現
在は重症の子供の治療の主流は定期注射で、出血が少なくなり、普通の子供
と同じように遊んだりスポーツをしたりできますし関節も悪くせずに済みま
す。もちろん親や本人は注射をする手間と痛みはありますけど。
・未成年の患者ではほとんど問題ないと思いますが、今までの製剤で感染し
たHIVや肝炎の問題です。エイズでは死ぬことはなくなりましたが、現在は日
本での血友病の死因のトップは出血でもエイズでもなくC型肝炎からきた肝硬
変や肝臓がんです。何とか今より良い治療法の開発を望みます。付け加える
とHIVの問題は日本特有の問題ではありません。アメリカは日本より多くの感
染者を出していますし、ヨーロッパも然りです。しかし一部共産圏の国を除
いた途上国の多くでも、きちんと向き合って対応できている気がします。こ
の対応については日本の血友病の中では過去のわだかまりが残っているのか
かなり遅れていると思います。
・最後に大きな問題がインヒビターです。重症の患者では製剤を使い始めた
患者の2から3割くらいは出てきます。自分が持っていないものを拒絶する
のは体の反応としては自然なのでしょうがこれが一部の患者だけに出ます。
しかしインヒビターがあっても出血の治療ができないということはありませ
ん。インヒビターの値が少ない方は製剤を多く使えばすみますし、多い方で
も普通の製剤よりは使いにくいですがノボセブンやファイバというバイパス
製剤が使えます。また、全員に効果があるわけではないですがインヒビター
そのものを消す治療であるITIもあります。

これが常識的な血友病患者の基本的知識でこれくらいは血友病患者としてま
た親として知っていて損はないと思います。


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なし 独り言(続)-投稿者:HIV感染血友病患者の一人