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-ノバクトについて-西村聡文(2011/2/25 00:14)No.2040
 ┗Re:ノバクトについて-高田 昇(2011/2/25 01:09)No.2041
  ┗Re:ノバクトについて-西村聡文(2011/2/25 11:23)No.2042
   ┗Re:ノバクトについて-高田 昇(2011/2/25 12:00)No.2043
    ┗Re:ノバクトについて-西村聡文(2011/2/25 14:45)No.2044


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2040ノバクトについて西村聡文 2011/2/25 00:14

先日別トピックでベネフィクスに関連しノバクトの記事を多少怒りを込めた
書き込みをさせていただきました。
先日私の主治医と話していて気づいたのですが、どうも話が通じません、観
点が違うようです。
なぜ私がカチンと来たのか、少々長くなりますが説明させていただきます。

まず事実整理から、
ノバクトは9因子の含有量が「国際」単位では実は1.6倍でしたということ
を2009年になって発表した。
そのことにだーれも関心が無いようで、血栓止血学会がなんかそんなことあ
ったけどみんな注意してねという程度の声明を発表しただけ。一部の医師が
過剰投与の可能性の懸念を表明している程度。

以下私の私見です。
確かに、1.6倍程度では、臨床上は問題の無い範囲、過剰投与になるほどの差
異とは思えません。
私がカチンと来たのは2009年になって発表したことです。科血研ほどの会社
なら、そういったことを分からなかったはずはありません、実際科血研の弁
明書にも、製造当初から認識していたと書いてあります(表記を使い分けてい
たと言い訳気味に書いていますが、ネットで調べた添付文書にはそんなこと
はひとことも書いていませんでした)。つまり科血研はこの10年余り事実を知
っていて黙っていたということになります。この10年あまりがどういった
意味を持つのか、それはちょうどベネフィックスの治験承認申請時期と重な
っているということです。
ベネフィクスの比較対象薬としては当然のことながらノバクトが選ばれてい
たでしょう。治験が「客観的」に評価されるなんて幻想で、患者が効いたと
感じたかかどうか「主観的」な要素が大きいのです。
1.6倍も打っておれば誰だってノバクトの方が効いたと感じます。つまりベネ
フィックスに不利に働くのです。実際ベネフィックスの承認は欧米に遅れる
こと10年です。10年前がどういう状況だったか皆さん覚えていますか。
プリオンがどうのだとか、血漿由来の安全性に懸念がもたれており、安全性
に問題は無いと専門医は言っていましたが、そんなセリフは何十年前から聞
き飽きた、と血友病Aの患者はどどっとバイオに流れていった頃です。私もそ
の一人で、自分たちは自己選択できるけどBの人たちはかわいそうだな、何で
国は早期承認しないのか、ベネフィクス側が薬価で折り合いがつかないのか
なと思っていました。ベネフィクス側も悔しかったでしょう、何で日本だけ
評価が低いのか、と。貿易用語で言えば非関税障壁が存在していたのです。
誤解を招かないように付け加えますと、このことを科血研側が意図していた
かどうかは別問題で結果としてそうなっていたということで、まあ、安全性
もこの10年の積み重ねた知見で差異がないというのがほぼ証明されました
ので結果オーライなのですが...。

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2041Re:ノバクトについて高田 昇 2011/2/25 01:09
記事番号2040へのコメント
 西村さんのご意見はごもっともです。私も血栓止血学会の血友病部会員で、こ
のコメントについて論議した当事者です。「ヤレヤレ」と思いました。ただ第IX
因子の使用量は日本はかなり少ないので、過剰投与にはまずなっていないので、
その点はご心配無用です。

 表示されている凝固因子の表示単位が変わっています。昔は「国際単位」はあ
りませんでした。「単位」とは正常人のプール血漿で1mLに含まれる量と定義さ
れていました。つまり日本人の100人の平均身長と、あとになって外国人が「国
際的な値である」として提示した平均身長は違っていたということです。

 凝固因子の中で絶対量を示す単位であるのはフィブリノーゲンだけです。フィ
ブリノーゲンは血漿100mLあたり200-300mgもあり、「グラム表示」ができます。
これに対し第VIII因子も第IX因子も微量であり1mgもありません。「標準物質」
がなかったのです。後になって国際的な標準化の努力がされたのです。

 次に、日本は血液製剤を輸出できません。輸入はできます。このため日本の
メーカーの製品は国内の基準に準拠すればよく、海外で販売するために変更する
必要はありません。また良い製品を作っても世界中に販売することはできません。

 これに対して、海外のグローバルなメーカーは世界を相手に商売をします。よ
り良いものを、より多く作り、世界標準の製品にしてくるのです。(より良いも
のをお金をかけて作るので、値段を上げてきます。先進国の中では日本の凝固因
子製剤は、今や安い部類になります。)

 第VIII因子製剤も、1000単位の表示よりもかなり多めに入っています。しかも
メーカーによって違います。発表が遅れたとは言え、正直に訂正した化血研ばか
りを責めても気の毒だと思います。

高田 昇

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2042Re:ノバクトについて西村聡文 2011/2/25 11:23
記事番号2041へのコメント
>私も血栓止血学会の血友病部会員で、このコメントについて論議した当事者です。

その議論の過程でベネフィクスに影響与えたかどうか話題になりましたか?

> 第VIII因子製剤も、1000単位の表示よりもかなり多めに入っています。しかも
>メーカーによって違います。

そうですね、でも他のメーカーは一つの基準で、すなわち90年代後半に国際基準でい
くと国が定めてからは、その国際基準で測定し、「盛り」を多くするのは、自社検定
と国家検定のばらつきや有効期限内での減衰を見込んで、わざとしている、専門家は
誰でも知っていることでしょう。
実際、今回発表資料を読むと科血研は、旧基準測定時でも、250単位製剤は300単位、
500単位は600、1000は1200を目処として作っていたと書いています。
これが通常の「盛り」の範囲でしょう。ところが国際基準で測定すると400単位、800
単位、1600単位だったことが、90年代後半に分かっていたが、(意図は不明だが)ほお
っておいた。


>発表が遅れたとは言え、正直に訂正した化血研ばかりを責めても気の毒だと思いま
す。


はたして、科血研が「正直」だったかどうかには疑念を持っています。
きっと日本での低評価に疑念を持ったベネフィックス側がノバクトMを手に入れ測定
して、クレームをつけたんじゃないかと推測しています。
(他社品を手に入れ研究することは日常茶飯事で、私もよく手配していました)

ノバクトMの発表が        2009年11月13日
ベネフィクス 製造承認取得 2009年10月16日 薬価収載 12月11日
このあまりに近い時期は偶然なのでしょうか?

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2043Re:ノバクトについて高田 昇 2011/2/25 12:00
記事番号2042へのコメント
西村さん。いつも鋭い指摘をありがとう。

>その議論の過程でベネフィクスに影響与えたかどうか話題になりましたか?

私は忘れっぽくなっていて不正確ですが、ベネフィックスの薬価収載の時期との関連の話は
出てこなかったと思います。化血研の担当者の方からの説明の時期と、血友病部会での話題
と時期がどっちが先だったか覚えていません。

>はたして、科血研が「正直」だったかどうかには疑念を持っています。

1600単位のものを1000単位で販売していたので、化血研(×科血研)としては損をしていたこ
とになります。少なくともズルだったとは思えません。

>きっと日本での低評価に疑念を持ったベネフィックス側がノバクトMを手に入れ測定
>して、クレームをつけたんじゃないかと推測しています。

そうかもしれません。正直、わかりません。ベネフィックスは日本への導入の会社も変わり
ましたし、承認の遅れについては、本当にみなさんがイラだっていましたね。(PMDA=医薬
品医療機器総合機構の審査基準が変化していったためと認識しています。)

いずれにしても、薬は「有効」で「安全」かつ「適正」なものを常に目指さなければなりま
せん。ノバクトMもベネフィックスも有効と安全という意味では、特段の問題はないように
思います。今後も改良が続くはずです。

高田 昇

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2044Re:ノバクトについて西村聡文 2011/2/25 14:45
記事番号2043へのコメント
>1600単位のものを1000単位で販売していたので、化血研(×科血研)としては損をしていたこ
>とになります。

果たして化血研は損をしたのでしょうか。
高田先生ならご存知でしょうが、9因子は余っています。
化血研は今は日赤から血漿を購入していますが、余っている9因子の入った血漿と入っていな
い血漿の価格にたいした差は無いんじゃないかなと思います。
ですから盛りを小盛りにしようが、大盛りにしようが原価なんて差が無いでしょう。
一方、日本の9因子市場は、血液製剤調査機構の調査によると年2000万単位程度です。
薬価が単位当り約60円ですので、2000×60=12億円程度でしょうか。
ノバクト以外のシェアーはしれてます。
8因子市場はバイオが参入すると、あっという間に半分以上が置き換わりました。
この10年、バイオが参入していたら少なく見積もっても年5億くらいノバクトの売上は減っ
ていたのかもしれません。10年分では50億になりますね。これで化血研は損をしたのでし
ょうか。
今回の不祥事のペナルティー的な処置として、薬価が表面上引き下げ、すなわち旧1000単位と
新1600単位の薬価が同じにされましたが、これも実質的に売上減につながるとは思えません。
今まで旧1000単位打っとった人が新800単位に移行するとは思えません、新1600単位を打っちゃ
うでしょう。

>いずれにしても、薬は「有効」で「安全」かつ「適正」なものを常に目指さなければなりま
>せん。ノバクトMもベネフィックスも有効と安全という意味では、特段の問題はないように
>思います。今後も改良が続くはずです。

その通りだと思います。